【PS4】The Order: 1886
発売元 | ソニー・コンピュータエンタテインメント (オフィシャルサイト) |
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発売日 | 2015-02-20 |
価格 | 6372円(税込) |
レーティング | 【Z】18才以上のみ対象 暴力 (CERO について) |
ショップ/リンク | Amazon |
タギングトップ3 | |
タイトル概要 |
■ ジャンル:アクション・アドベンチャー ■ プレイ人数:1人 |
- 総合ポイント
- 70
- (難易度)
- 1.71
- レビュー数
- 7
スコアチャート
GOOD!
こだわられたグラフィック。
架空の19世紀を描いた今作だが、スチームパンク風ヴィクトリア朝大英帝国というわけのわからない世界観を丁寧に描いている。
また、昨今のゲームにしてはある程度ゴア表現に力が入っており、破壊力の高い兵器で雑兵どもをぼろ雑巾の様に吹き飛ばし、頭や腸をもぐのはそれなりに楽しい。
ただ、本来それは当たり前のことというか、ゴア表現のあるゲームを規制して日本版を出さないことがそもそもおかしな話なわけで、規制あんまなしで出しましたというかくも当然のことをGOODに挙げるのは少々間違っているのかもしれない。
魅力的な架空兵器の数々。
たいていの兵器はデザインがアメリカ西部時代~第二次大戦時を基調としているが、テルミットを散布する火炎放射器や、タイタンフォールのようなアーク銃、モーゼルにしか見えないマシンピストル、ノーガンズライフじみた二連式リボルバーなど奇妙かつ眩惑的なものが多く、使っていて楽しい。
とりわけサーマイトライフルは使っていて本当に楽しい。敵が悲鳴を上げながら炎上するのを見るのはこの上ない楽しみだ。
新しい銃器を見つけるたびに試射してみたい衝動に駆られる反面、その新兵器がたいしたことないと幾分悲しい気持ちになるのも事実だ。
日本語吹き替えのクオリティは高い。声優といえば玄田哲章と銀河万丈くらいしか認識できない私だが、どこかで聞いたような声も多く、それらはおおむねキャラクターに合っているし、プロの声優を多用しているのか演技も悪くない。
とはいえ、昨今の洋ゲーは吹き替えに力を入れることも珍しくないのでそれほど褒められる点ではない。
BAD/REQUEST
驚くほど一本道なゲーム進行。
30年以上昔のマリオですらもっとたくさんの分岐や探索要素があったはずだ。
このゲームは本当にとりあえず歩いていればクリアできてしまうといっても過言ではないほどルートもクリア方法も一元的であり、プレイヤーによって経験することに差異の出る昨今の自由度を売りにするゲーム群の中において、ある意味異色を放っている。
驚くほど微妙なグラフィック。
グラフィックにこだわっているし、丁寧に作り上げようとしているのは認める。背景のライティングやテクスチャは非常にきれいと言って差し支えないが、まるで「すごいグラフィック!」を売りにできるようほどには感じられない。
それはおそらくキャラクターのせいだ。肌や髪、髭も丁寧なテクスチャだし、歯や爪が汚いというほかのゲームではあまり見られないような細やかなこだわりんも感じられる。
しかし、登場人物に存在感がないというか、重みが感じられない。
敵は片手だけ出して無反動でマシンピストルを連射してくるわ、拳銃弾くらってもひるまないわで、なんだか義肢でもつけてるの? という感じだし、主人公は思った以上にトットットッと軽やかに走り、とりあえず△を押せばスルーッと敵を近接キルする。それはムービー中においても同様で、主人公にしろ仲間にしろ敵にしろ、とにかく登場人物がそこにいるという実在感を抱かせないのだ。
本来それはグラフィックとは別の問題なのかもしれないが、背景の物々しさとスカスカなキャラクターがかみ合ってない時点でグラフィックを売りにできるとは思えない。
また、そのゲーム性からムービーとプレイ中のクオリティを同様に保つためなのだろうか、画面の上下に入る黒帯も目障りでならないという点も挙げられる。
ムービー中やQTE中、アクティブさのないときはグラフィックを美麗に感じられなくもないのだが、いかんせん銃撃戦など画面に動性がでるとそのクオリティがさほどではないことを思い知らされることになるだろう。なんというか、雰囲気でごまかそうとしている感が否めないのだ。
驚くほど既視感のあるゲーム性。
基本操作はギアーズオブウォー、画面表記やデスエフェクトはラストオブアス、そこにメタルギアのくどいムービーQTE、ヘビーレインのインタラクティブ操作を組み込むことで、肝をつぶすほどくだらないゲームが出来上がってしまった。中途半端すぎるアサクリ要素もただただ面倒くさい。
一応スチームパンク感やジャックザリパーの逸話を挿入する、伝統的な獣人族が登場するなどオリジナリティを出そうと腐心しているようだが、それらすべてが根幹となるゲーム性の蛇足に過ぎず、何の魅力をも育めていない。
驚くほどやることのないプレイタイム。
開幕からしばらくプレイヤーは□、○、△、×のボタンをぽちぽち押すくらいしかやることがない。しかも物語に全く説明がなく、登場人物にしろ専門用語にしろ、よくわからないものが多いままゲームが進行していくので、圧倒的置いてきぼりを食らわせられることになる。
実際ゲームが始まってもその感覚は変わることなく、ただひたすらにムービーとQTEの繰り返し、定点で流動性のないのつまらない銃撃戦、もはやクリエイターの自慰としか思えない安っぽい演出と物語に付き合わされることとなるのだ。
驚くほどつまらない銃撃戦。
GOODの項目でゴアと兵器について前述したが、だからといってこのゲームの銃撃戦が優れているかというとまったくそんなことはない。
見た目にギアーズオブウォーだからと言って騙されてはいけない。このゲームに漫然と漂うチープさは薄れていないし、それどころか銃撃戦のときがなかんずく、すべてのマイナスが露呈し、集約し、プレイヤーが一番楽しいはずの撃ち合いがただのストレス元と化しているのだ。
先に軽く触れたが、一言でいうと、射的である。
ひたすら出てくる敵を、定点でひたすら殲滅するだけ。
基本正面対正面での戦闘が多いため、回り込んで裏をかくといったようなことがほぼできない。
ショットガンを持って突っ込んでくる兵もいるにはいるがこれはただウザったいだけであって、銃撃戦に何のひねりも加えていない。とりあえずプレイヤーも敵もカバーからほとんど動くことなく(ひどい場合敵は戦場のど真ん中で棒立ちになっているのだ!)、とりあえずL2とR2を交互に押す、それをこのゲームでは銃撃戦と呼ぶ、そのことに気付いたとき私は腰を抜かすほどに慄然した。
主人公の特殊能力も大して使い勝手がよくはなく、ダウン中に薬を飲む必然性もよく分からず、とにかく戦場に動きがなく、数多あるTPSのなかで随一完成度の低い射的ゲーがここに爆誕してしまったのだ。
とりわけひどいのが半獣戦、敵の攻撃がとにかく先制的にはいるので、プレイヤーは能動的に攻撃できない。それだけならまだよいのだが、対処法はとにかく銃を構えて敵の襲撃を待ち、突っ込んで来たら掃射、ある程度距離が縮まったら×ボタンで回避、それを延々と繰り返しさせられる。この世の終わりが来るのかと思うほど延々と。
ていうか、そもそもこの戦闘DEAD SPACEのStalker戦で見た! という感じである。もちろん大幅な劣化が加味されているが。
COMMENT
奇妙なゲームである。
まず開幕ムービーが長い。とはいえそれについてはプレ情報があったので責める気にはなれなかった。ある程度プロローグが進み、初の銃撃戦が始まったところで、私は小首をかしげた。あれ? いや、まさか。という気持である。
続く半獣の登場で少しずつ私は汗をかき始め、その連中との戦闘においてこのゲームのすべてを悟ってしまったような気がして憔悴した。中盤からは無意味な消化試合をやっている気にすらなった。
SCEが販売するということもあってか割と日本国内でも、『圧倒的な世界観』『魅力の塊みたいな登場人物』『美麗なグラフィック』『唯一無二のオリジナリティ』などなど、ここら辺の使い古された大言壮語を駆使して、大々的にプロモートされてきた本作品。
たしかにテーザーサイトやプロモーション用動画を観るかぎりこのゲームは魅力的に見える。開発陣の熱とこだわりを感じられるメイキングや、いかにも面白そげなトレイラーは本当に本作をすごいゲームに感じさせる。
しかしその実蓋を開けると、BADの項目で述べたありとあらゆる負の要素が結集し、横溢し、パンドラの箱のごとく最後に希望が残っているかと思いきや、物語は何ら解決せず、途中で作るの飽きちゃったのかな? と思うくらい唐突なエンディングに打ちのめされることとなる。
奇妙といったのはようはプロモーションと中身の食い違いがひどいというところに起因する。ましでやSCEが販売する作品んが中身こんなんでいいのか、とおかしな気分になってくる。
ヘビーレインやラストオブアスのようにインタラクティブでほぼ一本道なゲームに今後SCEは注力していくつもりなのかもしれないが、本来一本道ゲーはそのほかいわゆるサンドボックス、自由度の高いといわれるゲームに比して、その描写力、演出力、物語性が強く問われるはずなのだ。
ラストオブアスもステルスやアクション自体はさほど魅力的ではないが、それを補って余りある物語性や演出があったから売れたし、プレイヤーの心に強く残る名作となった。
基本的にSCE絡みとなれば盲目的に出来の良いゲームだと思ってしまうのは私の過ちだが、このような駄作を世に出してしまったことはSCEの過ちだろう。
ともすれば開発陣もコートの質感やはためきに力を入れましたなどと寝言を言わずに、もっと根本的な部分、ゲームプレイに心血を注いていただきたい。グラフィックがそれほどでなくともゲーム自体が優れていれば充分魅力的なのは、昨今のチープだが面白い数々の作品が証明しているのだから。
ゲームをクリアしてしばらくしてから不意に痛感したのは、The Order 1886はもしかするとゲームではなかったのかもしれないという思いだ。
バイオのアレやFFのアレみたいに私が購入したのは単なる3DCG映画のソフトであったのはないかと。
この映画のすごいところは、映像に視聴者がインタラクトできるところなのではないかと。
一度その思いにとらわれると、上記に挙げたマイナスを許そうという気にもなる。そう、ラファイエットがガラハッドを許し、見逃したように。
なので、今後はパッケージ裏に『アクション・アドベンチャー』などと書かずに、『視聴者参加型映画!』とでも書いておいていただきたい。
(あと、ピッキングチュートリアル。振動が弱まるところまでスティックを回すって書いてあるけど、実際は強まるところじゃないの? これは、誤訳? なのか? なお字幕を出すと『恩に切る』など明らかな誤訳が出てくる模様)