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【PS4】リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~

発売元 コーエーテクモゲームスオフィシャルサイト
発売日 2017-12-21
価格 7884円(税込)
レーティング 【B】12才以上対象 セクシャル (CERO について)
ショップ/リンク Amazon
タギングトップ3
タイトル概要 ■ ジャンル:錬金術再生RPG
■ プレイ人数:1人



オリジナリティー グラフィックス サウンド 熱中度 満足感 快適さ (難易度)
3pt 4pt 5pt 4pt 4pt 4pt 1pt
総合点
80pt

GOOD!

とても長くなってしまったので、結論だけでいい方はコメントをご覧ください。


■更に面白くなった錬金術システム

基本は前作と同じシステムなのですが、触媒の重要性が増すなどの調整がなされているほか、『活性化』という新システムが追加されました。システム自体の説明は、言葉だけでは難しいので公式サイトか体験版で確認してください。

そして、本作の目玉要素である『活性化』ですが、とても面白いです。活性化によってなにができるかを一言でいうと、ずるができます。通常の調合では、「青いマスが足りない……緑のマスがあるけど要らない……」といった具合に上手くいかないパズルに悩むわけですが、「じゃあ緑のマスを青くしちゃえばいいじゃん!」というパズルをぶち壊しにするのが活性化です。

これがとても気持ちいい。勝負の最中に盤面をひっくり返すような、やってやったぜ、という清々しさ。これがPvPのパズルならとんでもない話ですが、一人でやるゲームですから、なんでもアリです。難解なパズルをぶっ壊すという新たな楽しさとともに、パズルが苦手な人でも比較的かんたんに理想のアイテムを作れるようになりました。

それではバランスが壊れてしまうのではないか、というと、そんなことはありません。活性化を使っても限度はあります。最良のアイテムを作るためにはやはり良い素材が求められます。また、活性化を"使わなければならない"というようなことも、おそらくありません。すべて確認したわけではないのですが、最難関に近いアイテムでも活性化なしで最大限の効果を引き出せるため、あくまで困ったら使う、というポジションになっています。実にうまい調整だと思いました。

また、不評だった熟練度が撤廃されるとともに、触媒の入手も簡単になっていて、全作よりも用意しやすくなっています。この点に限らないのですが、本作では、前作でダメだったシステムを改善しようという傾向が強く感じられて、とても高評価です。


■過去作から良いとこどり&改善されたシステム

街での操作は、前々作にあたるソフィーのアトリエをベースとして、ショートカット機能をより便利に。調合は上述の通り、前作の不満点を改善したもの。目新しさという意味では今一つですが、随所がブラッシュアップされたシステムになっていて快適です。

特に重要な点としては、調合アイテムを発想するためのレシピノートに、凄まじく具体的な内容が表示されるようになったことでしょうか。ヒントじゃなくて答えそのものが書かれています。他にも、いまなにをすればいいのかが明示されていたり、ストレスがありません。


■上手くまとまったストーリー

アトリエシリーズのなかでも、特に不思議な錬金術師の三作目(アトリエでは、三作が一つのセットのようになっているのが慣例)ということもあり、新たなメインストーリーはもちろんですが、前作と前々作の補完も求められます。

その点、本作はというと、かなりの完成度です。ソフィーのプラフタを人間にするための旅、失踪中のコルネリアの父親、フリッツの家族など、未完だった部分にきちんと決着をつけています。また、メインであるリディー&スール(以下、双子)のエンディングも、複数ありますが、どれもキレイに終わっていて丁寧です。詳細はもちろん伏せますが、どのエンディングでも、手段は違うものの、ある理想のために頑張っていく……という感じで気持ちいいです。

また、本作ではアトリエにしては珍しくといっては失礼ですが、非常に緊張感のある、燃える場面があります。萌えじゃないです。そっちはいつも溢れてます。

中盤に対峙するとある敵との戦いは、本作屈指の難所であり、少年漫画のような展開、ボーカル付きの専用曲……とこれでもかと言わんばかりに盛り上げてきます。それまで地味というか、どうしても先輩錬金術師たちに一歩劣るような描写の多かった主人公の双子たちの見せ場でもあり、物語の大きな転機にもなっていて、素晴らしい演出。

BADのほうに書きますが、これはダメだろうという部分も多少あります。しかし、総合的に本作のストーリーを評価するなら、重要なところではきちんと決めている良いストーリーだと思います。


■バランスの良い戦闘

過去作で強すぎた特性・効果などが弱化、あるいは入手時期が遅くなるように調整され、ちょうどいい歯ごたえを感じながら戦えるようになりました。作品によってアイテムが強かったり、キャラクターの物理攻撃が強かったり、戦闘のバランスはちょっと不安定なシリーズなのですが、本作では上手くまとまっています。

便利なアイテムに対して、強力なキャラクターのスキルといった塩梅でしょうか。この辺りは、やり込むとまた違うのかもしれませんが、本編をクリアするまではそのような具合でちょうどいい感じです。

特に中盤、ストーリーも盛り上がるボス戦では、前衛がなぎ倒されアイテムが底を尽きかけ、という今時珍しいくらいの総力戦になりました。苦戦度合いはプレイスタイルにもよると思いますが、かなり良い調整です。


■魅力的なグラフィックの世界

アニメでもなくリアルでもない2.5Dといった趣きの不思議な錬金術師のシリーズですが、本作はその中で頭一つ抜けていると思います。

グラフィックが進化したというより、絵画の世界というシチュエーションが、非現実的な(貶しているわけではありません。そのくらい可愛い、キレイというような意味合い)キャラクターにマッチしていて凄く魅力的なんです。

絵画だけあって、ハロウィンのような雰囲気の森だったり、溶岩の滝があったり、氷の樹が生えていたり、なんでもアリです。その非現実さが丁度いい。実写と見まごうほどリアルなグラフィックだったらこうはいきません。リアルでないことを活かした世界になっている、という感じですね。

単純に美麗さというよりは、新しい絵画の世界に行くたびにガラッと雰囲気が変わるので飽きにくく、何度も驚きを提供してくれるグラフィック、という点を評価してます。


■豊富かつ良質なBGM

アトリエの長所として安定して音楽が良いという点がありますが、とりわけ本作は、JRPGの最高峰といって過言ではないと思います。

長時間聴くことになるアトリエや街のBGMは心地良く、通常の戦闘は盛り上げつつもアトリエらしい楽しげな曲で、因縁のボスではボーカル付きでとことん盛り上げる……という具合で、曲そのものの良さだけでなく、これ以上ないくらいゲームに合ってます。

特に良いなと思ったのはフィールドの曲で、絵画の世界にピッタリの良曲ばかり。中でも、星彩平原のBGMはあまりにもマッチしていて行く度にちょっと泣きそうになります。そのくらいの良さ。

また、通常戦闘と絵画の世界のBGMは、それぞれリディーとスールのバージョンがあります。残念ながら、一週目はほとんどリディーを操作していたためスールverはそこまで聴くことができませんでしたが、BGMの満喫を目的に今度はスール中心で二週目をやろうかな、と思わせる魅力があります。


■個性的なキャラクターたちと豊富なサブイベント

キャラクター一人ひとりの魅力について書いていてはキリがありませんので割愛しますが、個性的なキャラクターが多いです。

サブイベントはギャグが多くなり、会話のテンポも全体的に良くなっています。その影響か、今まで以上にキャラクターの個性がどんどん引き出されていく感じで、概ねどのイベントも面白いと思います。また、サブイベントといってもただ面白いだけの小話というわけではなく、そのキャラクターを根幹を揺るがすくらいのイベントも用意されています。

例えば、僕はクールな美少年というキャラはあまり好きではないので、プレイする前はアルトの設定を見て好きになれるか不安だったのですが、クリア後の現在は一番のお気に入りになりました。それだけイベントが魅力的で、アルトの良さを感じさせてくれた、ということです。

分量もかなりのもので、メインキャラ及び旧作からの続投キャラに関しては十分すぎるイベント量、なのですが……一方で、必要だろうと思われるキャラが異常に少なかったりもします。その点についてはBADに。

BAD/REQUEST

■パーティキャラが固定

パーティメンバーは特定の6人で固定されており、メンバーの入れ替えはありません。本作で最も残念な点です。

事前に発表されていたことではありますが、旧作よりも明らかにプレイアブルキャラクターが減ってしまったこと、また、設定上は参戦してもなんら不自然ではなさそうなキャラクターが多いせいで、どうしてこのキャラは手伝ってくれないんだろう、という不自然さを生み出してしまっている点は不満です。

例えば、ルーシャは「戦闘は苦手」と言ってはいますが、主人公たちに同行している設定のため、同じく荒事は苦手なリディーが戦っているのを横で見てることになってしまいます。他にも、世話焼きな面が強調されている師匠役のイルメリアは、成長させるための序盤はともかく中盤以降は手伝ってくれてもよさそうですし、プラフタに至っては自分が人間になるための旅なのにソフィーばかりに働かせてなにをやっているのか謎です。魔物退治の仕事もしているフリッツは雇えるでしょうし、コルネリアも目的を達成した終盤ならばあるいは。ルーシャ以外は旧作で戦っていた面子でもありますし。

こう考えるとキリがないので、プレイアブルキャラクターを絞るのは仕方ありませんし、旧作からのメンバーが大量に参加するのもなんですが、新規キャラクターのルーシャは手伝ってくれてもいいじゃん、と思ってしまう立ち位置なのでどうしても気になってしまいますね。

また、そういった不自然さ抜きにしても、やはり6人は少ないです。そのぶん、掛け合いを豊富に出来ているというメリットもあるのでしょうけど、それならばせめて、連携必殺技はどの組み合わせでも出せるようにしてほしかったところ。ただでさえメンバーが固定なのに、必殺技が出せる組み合わせにしようと思うと、そのパターンはかなり限られてしまいます。

パーティ編成はかなり窮屈な印象で、連携ができる組み合わせも予想通りで意外性がありません。すべての組み合わせがあれば、このペアだとこんな風になるのか! という驚きや笑いがあったと思うのですが、残念ながら、とても普通です。


■戦闘システムの開放が遅い&不便

前衛&後衛や、そのペアによっては必殺技が出せるというシステムですが、使えるようになるのが遅いです。

前衛&後衛は、別に最初から使えてもいいんじゃないでしょうか。リディーに比べればスールは明らかに戦闘が得意そうですし、実際、初期ステータスもスールが圧倒的に前衛に向いています。チュートリアルでスール(前衛)&リディー(後衛)のペアにしておいたほうが、後で唐突に解禁されるより分かりやすいと思いますし、自由度も増えます。

必殺技に関しては、ただただ解禁が遅い。具体的な時期は伏せますが、「僕はこのまま必殺技を使わずにクリアするんだろうか……?」と不安になるくらい遅いです。その遅さ故に活躍の機会も限られ、ノーマルエンディングを見れればいいかな、くらいの人は下手すると一度も見ないのではないでしょうか。上述の通り、必殺技が存在する組み合わせが限られているのも残念。

また、戦闘中に現地で拾った素材や、持ち込んだアイテムを強化して使用するバトルミックスというシステムもあります。こちらはリディーもしくはスールが後衛にいる状態で、前衛のメンバーが対応するアイテムを使用することが発動条件。当然ながら、双子を前衛として使っているとバトルミックスはできません。不便です。『双子が後衛にいる状態だとそういう条件で発動できる』のは構いませんが、前衛にいるなら普通に使わせてほしい。戦闘中の調合という時点でトンデモですから、前衛でやるのはおかしいけど後衛なら自然なんてこともありませんし。

それぞれ、一つだけならば流せる程度の問題ではあるのですが、積み重なった結果、やや不自由な印象を受けました。戦闘がつまらないわけではなく、むしろ本作はかなりバランスが取れていて面白いほうなのですが、やりたいと思ったことがやれない、という点で不満が残ります。


■一部のイベントの問題

あくまで、膨大なイベントの中の一部ではありますが、アトリエには珍しく不愉快な気持ちにさせられたシーンがありました。

一つは、主人公たちが執拗に無職と罵ること。文字にするとなんてことないような感じですが、言われた当人は無職ではないと否定していますし、なにより主人公たちにとっては無償で手伝ってくれている恩人でもあります。その相手に、特になんの否もない状況で事実ではない悪口を繰り返すのはからかうにしても行き過ぎです。

なにより、それを咎める人がいません。双子のうちどちらかが言いすぎだと諫めるなり、そんなこと言って〇〇もこの間~とか矛先を変えたりすれば丸く収まると思いますが、むしろ二人して畳みかけるので、単に罵っただけで終わってます。一度きりならともかく何度かそういうイベントがあるので、苦手だとキツイです。

また、父親が娘が稼いだ金を盗むというギャグもあります。こちらは露骨にギャグ調になってはいるのですが、笑えません。完全に虐待です。ファンタジーでなに言ってるんだと思うかもしれませんが、本作の倫理観は現代日本とほぼ同じなので、中途半端にリアルな悪行は引いてしまいます。

その後、詳細は伏せますがダメ親父になった理由は判明するものの、金を盗む理由にはなっていません。それどころか、尚のこと娘は大事にしなきゃならないだろうと心証が悪化したくらいです。

それと、不愉快になった話とは別に、新キャラであるネージュが可愛いのに扱いが妙に悪い、という点も気になりました。メインストーリーに関わるキャラなのですが、サブイベントがほとんどなく、可愛いのに都合のいいお助けキャラのようなポジションになってしまっています。友達になったと言いつつ困った時に出向くだけというのはあんまりな話。ネージュのほうからの頼みを聞くようなイベントの一つでもあれば違ったと思うのですが。可愛いのに残念です。キャプテン・バッケンやフーコもそうなんですが、絵画の世界の住人はもうちょっと掘り下げてほしかったところ。


■採取地の広さに対して移動が遅い

システム面での数少ない不満です。

より具体的に説明しますと、絵画の世界は3~5ほどの区画にわかれていて、それぞれの区画(より正確にいうと採取ポイントごと)で採取できるアイテムも若干異なります。なんとなく素材を拾い集めてる時はいいのですが、〇〇がほしい!とピンポイントで狙いたい時に、それが入口から最も遠かったりすると移動がちょっと面倒です。クリア済みの絵画では突入する区画を選ばせてほしかったところ。また、移動速度を上昇させる探索アイテムがあればもっと快適だったのですが、ありません。


■品質と装備効力の効果がわかりづらい

アイテムの品質による影響が少なくなった、あるいはなくなったみたいなのですが、よくわかりません……。

装備効力のほうも同じで、こちらは今作で登場したパラメータなのですが、「戦闘の色んな部分で効果を発揮するよ」という感じのほんわかとした説明があるだけなので、高くしておけばいいんだろうな、というくらいの認識のままクリアしました。装備品を次世代のものにすると上昇するので、強くなったのが攻撃力によるものなのか装備効力によるものなのか、効果が実感しづらいのです。

裏を返せば、よくわからなくても困らない親切な設計と言えなくもないですが、せっかくの新しいパラメータなのに勿体ない。アルトというキャラクターが装備効力による影響を強く受ける戦闘スタイルなので、アルトが仲間になったタイミングで詳しい説明が入る、とかあっても良かったと思います。

COMMENT

アトリエシリーズはソフィーとフィリスを含めた過去10作品ほどプレイしており、エンディングはコンプ済み、トロフィーはまだ一部残っている状態でのレビューです。

総評しますと、かなりの良作だと思います。

調合の楽しさ・キャラクターの魅力・ストーリーの面白さ・システムといった大事なところはちゃんと抑えてあります。戦闘に関してはちょっと不便なところがあるのですが、もともと戦闘してる時間がそこまで長いシリーズでもないので、目玉要素だったわりにガッカリ、というくらいの感じに捉えてください。なにより、調合とストーリーは最近のアトリエで出色の出来で、少なくとも不思議な錬金術師のシリーズでは、本作が一番の出来栄えだと思います。

BADの文章量が多いのは、良い点はなんとなく良いんだよでも伝わると思うのですが、悪い点は、批判するからにはなるべく正確に書こうと思ったからで、別に悪い点が多いわけではありません。良い部分のほうが圧倒的に多いですし、本当に良いゲームです。

これといった致命的な不足はありませんし、アトリエ未経験の方が本作からプレイし始めてもちゃんとストーリーはわかるようになってます。プラフタのイベントなどはソフィーのアトリエから続いている部分があるので、プレイしているとより楽しめるかな、というくらい。オススメですよ。

ただひたすら残念なのはネージュの扱いです。氷の世界の住人で、才能がありすぎたために友達がいない少女という、なんとなく前作のキルシェを彷彿とさせる、ネタ切れなのかな~とか、氷の少女=友達がいないって安直じゃないかなと感じさせるキャラですが、可愛いです。可愛いからいいんですけど、出番が少ない。メインストーリーだけだと友達料と称して情報だけ持っていっているようで忍びなく、イベント予告マークがないのに出向いたりするんですが、やっぱりイベントは発生しませんし、やっぱり可愛いです。連れて歩きたい。

   
プレイ時間:60時間以上100時間未満(クリア済)
BAさん  [2018-01-04 掲載]

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総合ポイント
84
(難易度)
2.29
レビュー数
17
スコアチャート リディー&スールのアトリエ ~不思議な絵画の錬金術士~レビューチャート

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11.8%
60-69
17.6%
70-79
23.5%
80-89
41.2%
90-100
【60点以上】
94.1%
【標準偏差】
13.73