【PS4】FINAL FANTASY XV(FF15)
発売元 | スクウェア・エニックス (オフィシャルサイト) |
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発売日 | 2016-11-29 |
価格 | 9504円(税込) |
レーティング | 【C】15才以上対象 セクシャル 暴力 (CERO について) |
ショップ/リンク | Amazon |
タギングトップ3 | |
タイトル概要 |
■ ジャンル:RPG ■ プレイ人数:1人 ■ DELUXE EDITION版:13,997円 ■ PlayStationVR:対応 【ロイヤルエディション版】 ■ 発売日:2018/03/06 ■ 価格:8,424円 本編にダウンロードコンテンツのプロダクトコードを追加した商品です。 |
- 総合ポイント
- 60
- (難易度)
- 1.87
- レビュー数
- 46
スコアチャート
GOOD!
プレイ時間:約21時間(1周目のみ、サブクエは15個ほど完遂)
「キングスグレイブ」「ブラザーフッド(アニメ)視聴済み」
※良い点
【製品化されたこと、それ自体】
・ 難産の結果、ようやく製品化された。
【キャンプというものを表現した】
・ RPGにおいて、捨象される要素を敢えて表現した。
【自動写真撮影という新しい機能】
・ 物語の中でネガティブに働く場面も多かったが、この機能自体は良いものだった。
【数々の企業コラボ】
・ アウトドア用品のコールマンや、車のアウディなど、他業種コラボは新鮮だった。
【ATRによる開発状況の報告】
・ 一度、完全に信頼を失っただけに、対ユーザーコミュニケーションの努力は評価されるべきである。
BAD/REQUEST
【理解させることを放棄している統一性・一貫性のなさ】
祖国が襲撃され、父王が死ぬという緊急事態でありながら、観光気分が抜けない道中の旅。この中核設定にプレイヤーは混乱します。また、主人公たちは潜伏しているはずなのに、モンスター討伐で名を挙げて目立ったりもします。何がしたいのでしょうか。
別の例をあげると、途中加入する イリス です。この女性の描かれ方は狂気そのものです。
彼女は王都から別の2名と レスタルム の町に落ち延び、主人公たちと再会します。再会の直後、呑気に ノクト とお散歩しますが、さもヒロインの ルーナ がいなければ自分が ノクト とくっつけるのにという雰囲気を醸し出してきます。
さらに、この後、一緒に落ち延びた2名のうちの1人(〇〇〇 )が帝国に〇〇〇されます。その日は悲しい顔をするも、次の日には明るく一緒にドライブして、 ノクト のほうを何度も見ながら〇〇〇 の話題まで振ってきます。まるで 〇〇〇おかげで ノクト のそばにいられるのが嬉しいかのように。反社会性人格障害のそれです。
登場人物のほとんどがこのように行動に一貫性がなく、その場の空気にふさわしくない態度を頻繁にとるため、ストーリーを進めるたびに混乱します。
他にも、帝国が何をしたいのかわからないという展開が続いたり、携帯電話で連絡取れよ!とツッコミたくなったり、突如として話が飛んだりするので、その都度、プレイヤーが「きっとこういうことだろう」とストーリーを補完しないといけません。もちろん、その補完に根拠はありません。説明されてないのですから。
優れた映画や漫画が、セリフが少なくても省略が多くても伝わるのは、演技・表情・構図といった表現に加え、展開に統一感と一貫性があるからだと思います。しかし、FF15は、緊急事態に呑気に遊んでいるという状況で、根本的に狂っています。そこで要素を省略してしまったら、もはや何も残りません。ただ絵が動き、音が出ているだけです。
未完成品、駄作どころではありません。事故案件です。
【オープンワールドの空虚さを埋めただけのサブクエスト】
サブクエストは非常に多く、ぶらぶらしていたら突然開始するものや、完遂するとすぐに次のクエストに派生するものなど、寄り道の誘惑はあります。
しかし、これらのサブクエストのほとんどは経験値とギル・アイテム報酬のためにしか存在しておらず、サブクエストをこなしたから、この世界について深く知ることができるといった物語要素はありません。まともなものといえば、チョコボを利用可能にするためのベヒーモス討伐(エピソードダスカの焼き直し)程度です。
ただ広いだけのオープンワールドをごまかすために、スクリプトでランダム生成したのではないか?と勘ぐるほど中身のないサブクエストが大量に存在しています。何のためのオープンワールドなのでしょうか。何のための自由度なのでしょうか。
サブクエストとメインクエストの区別ができないほど物語リッチなWitcher3 や、サブクエストを通じて世界設定やキャラクターの背景を深く知れる DragonAge: Inquisition といった秀作と比較すると、FF15のサブクエストは「ただ存在するだけ」でしかありません。
大量にあるサブクエストは、おそらく旅のための「行き先リスト」という意味合いでしかないのでしょう。そうであったとしても、もう少し味付けすることはできなかったのでしょうか。
私はクエスト前後でNPCの会話が変わることを確認するタイプのゲーマーですが、2章の時点でFF15のサブクエスト群には失望しました。「開発陣は、この世界のことを愛していない」という絶望すら感じました。本当に残念です。
【スタイリッシュにしただけの戦闘】
戦闘に関しての問題点は大きく3つあります。(1)単調で戦略性に乏しいこと、(2)テンポを悪くする要素がたくさんあること、(3)その他操作やカメラの悪さ・魔法についてです。
(1)単調で戦略性に乏しい
戦闘が非常に単調です。アクションですが、基本的に2つボタンを押し続けるだけの戦闘です。カウンターアクションも1種類です。攻撃途中に武器を変えて、自作コンボを作ることを想定しているようですが、見た目の派手さ以上の意味を見出せませんでした。普通に「XHB(クロスホットバー)」的なものを使うスキルアクションベースの戦闘を期待していましたが、まさかオートアタックしかないとは思いませんでした。
リアルタイムに戦闘が進展しますが、クラウドコントロールする手段がストップしか見つけられませんでした。スロウやスリプルはどこにいったのでしょうか。スーパーアーマー状態になれる手段もありません。戦闘のペースに変化をつけることができません。
アイテムを使える(指示が出せる)のは ノクト だけなので、強敵相手では自然と、ノクト が安全な位置に陣取り、ヒーラー役・起こし役をするようになります。もしくは、ひたすら回復薬を浪費させる仲間を戦闘不能放置して、ノクト が単騎か耐久力のある グラディオ と二人で戦うことになります。何なのでしょうか。
(2)テンポを悪くする要素がたくさんある
ウェイトモードは ノクト を操作してない場合に自動で発動します。気を抜くと、意図せずに戦闘が勝手に止まってしまいます。何を考えてこのような形で実装したのでしょうか。開発陣は DragonAge: Inquisition をプレイしたことがないのでしょうか。
敵の攻撃による吹き飛ばしが頻繁に起こり、復帰までに時間がかかります。受け身や動作キャンセルができないのはアクションと呼べるのでしょうか。
仲間は ノクト と比べると弱いです。それ自体は良いのですが、ノクト の回避パリイやシフト移動を前提にバランスされているようで、仲間が頻繁に倒れます。回復手段はアイテムだけ。アイテム欄を開くたびに戦闘がとまります。戦闘がとまるだけではありません。さらにアイテム使用のモーションが入ります。この回復アイテムに関わる戦闘中断が4人分発生します。
ちなみに回復アイテム使用モーション中は無敵です。ダークソウルのようにアイテム使用にモーションがあって、それ自体が隙になるという真のアクションゲームなら、モーションがあって良いと思います。でも、FF15は無敵じゃないですか。モーションが無意味すぎます。FF13でオプティマチェンジ時に余計なカットインが入ることが不評で、FF13-2でカットインが廃止されたじゃないですか。何を学んできたのでしょうか。
(3)その他操作やカメラの悪さ・魔法について
ファントムソード召喚のL1R1同時押しの発動が難しいです。同時押し判定が厳しいのか、優先順位の問題なのか、考えるのも嫌になります。
本作の召喚は、ピンチになったときに、確率で発生し、L2ボタンを長押しすることで発動します。しかし、このL2ボタン長押しですが、長押ししても画面上は何も変わらないのです。召喚には時間がかかるため、本当に召喚が実行できているのかどうかがわかりません。ボタンを押したらレスポンスがある。ビデオゲームの基本だと思いますが、基本すらできていないのはどうかと思います。
ダンジョン内の戦闘は狭い場所が多く、カメラが暴れまくります。途中から諦めて、画面は見ずにHP・MP・コマンドゲージだけを見て戦闘をしていました。それで問題ないのです。雰囲気だけのアクション戦闘なので。
また、ダンジョン内ではダッシュが制限されたりします。そのため、ジャンプ移動や前転移動のほうが速く移動できます。当然、使いますよね、ゲーマーならね。ダッシュのスタミナ制限なども勘案すると、間が抜けてますね。
魔法は非常に強く、「ピーキー」といったほうが良いかもしれません。今作における攻略の救済手段、あるいは低レベルやりこみ用の要素のひとつだと思いました。しかし、非常にめんどくさく、制限もきついものです。フレンドリーファイア(仲間にもダメージ発生)は作風として認めましょう。しかし、標の付近に微妙に離れて置かれているエレメントスポットには悪意しか感じませんでした。しかも、すぐに枯れます。マジックボトルの数で持てる魔法が制限されるのだから、エレメントスポットは無限供給で良かったのではないでしょうか。
【RPGの面白さを破壊してしまった料理】
ノクト は、王の力を継承するため、歴代王の剣「ファントムソード」を探すように求められます。ところが、このファントムソードが「王の力」というには失笑レベルで弱いのです。ファントムソードだけではありません。装備全てが相対的に価値を低下させられています。料理というドーピングによって。
高い料理は、HPが1000上がったり、攻撃力が400上がったりします。料理の効果は破格なので、装備を更新するのがバカバカしくなります。王の力も料理の前では霞みます。酷いバランスです。レベル上げすらバカバカしい。RPGの醍醐味である成長デザインが根本的に狂っています。
常識的に考えれば、ファントムソードを継承するたびに ノクト のステータスが大きく上昇したり、仲間に自動でバフが掛かったりするのだと思います。そういう形であれば、王の力を継承するたびに王としての自信と自覚も芽生え、プレイヤーは ノクト との一体感を強められたのではないでしょうか。実際は、ファントムソードはトロフィー要素でしかありませんでした。
料理というキャンプ要素を出すために犠牲にした、世界設定と、RPGの醍醐味の成長要素。本当に虚しい。
【過剰なPRと、それに見合わないクオリティ】
同時期に発売された Watch Dogs 2 と比較するとわかりますが、向こうは自動車がたくさん通っています。車線変更もしますし、信号待ちもします。極上のはずの FF15 はたまに自動車にすれ違う程度です。海外がサクッと続編を出してくるのこととの差を痛感しました。
オープンワールドでどこにでも行けるはずが、見えない壁が多く、またオブジェクトを移動させて踏み台にして高所に登るみたいということも当然できません。また、そのマップも同じようなロケーションで代わり映えがしない。王都、オルティシエ、テネブラエ、帝国……一体何だったのか。
分量的なものは作り直しというハンデがあったので、ある程度想定していましたが、一番衝撃だったのがマップ上に表示される宝箱マークです。てっきり、文字通り宝箱があったり、壺があったりするのだと思いました。色の違う、光の玉でした。隠しダンジョンに凝るぐらいなら、こういうメイン部分をもっと凝ってほしかった。
「ここまでするのがFF」と喧伝されていましたが、実態は何から何まで「その程度」でしかないのです。バグについてはことさら述べません。1つのダンジョンにつき、数回仲間が戦闘に参加しない棒立ち現象が発生しましたし、仲間連携時にあらぬところにワープすることも何度もありました。でも、このゲームの問題はバグではないんです。そんなものは些細なことですよ、もっと根本的なゲーム性や物語性の部分に比べれば。
COMMENT
【総評の前に:グラフィックスとサウンドについて】
グラフィックスについては Good/Bad のどちらでも触れませんでしたが、グローバル市場向けのAAAタイトルとしては、褒めるほどでないし、取り立てて悪いわけでもないといった印象でした。
また、サウンドは声楽を使った印象的な曲もありましたが、「スタンド・バイ・ミー」で往年の映画の思い出を汚された気分になったり、ドライブに全くそぐわないのに過去FF曲をカーステレオで流す仕様にしたりと、不満がありますが、それ以上に言及しなければならないことが多かったので省略しました。
【総評の前に:かつてのPVから失われた最も重要なもの】
FF15に生まれ変わることが発表された2013年E3の映像をみると、使われなくなったシーンや設定などが多く目につきます。もちろん、製品にするにあたり、要素の削除改変が必要であることは理解してます。しかし、最も重要な「魂」の部分まで捨ててしまったのは非常に残念です。
2013年E3の映像では、当然ですが、登場人物たちはヴェルサスの頃から依然として「ホスト」でした。しかし、同時にとてもかっこよく、使命感や背負っているものが伝わってきました。そこに血がたぎる「熱さ」がありました。
製品になったものは……本当に残念でなりません。
【総評:見かけ倒し】
ゲーム内容に関しては褒められる部分はほとんどありません。それよりも、欠点が非常に目立つというのが総評です。逆に、欠点を覆い隠すほどの、素晴らしいものがあるのか?と問われると「ない」というのが私の実感です。
このゲームは「あばたもえくぼ」というように、このゲームに恋をしてしまった人以外は高評価ができない凡庸な作品です。何もかもが見かけ倒しで中途半端です。これの一体どこが「極上」なのでしょうか。「理想とはいえないけど、まあまあの出来だった」なんてレベルの話ではありません。「凡庸」を「極上」と言わなければならない現実は、哀れでしかありません。