過去のグラスホッパーマニファクチュア(以下GHM)作品を思い出させる名前やキャラクターデザインや「キラー7」のようなグラフィックスに加え、「デビルメイクライ」から定義されただろう剣と射撃のスラッシュアクションと本来二重に目新しいものではないかに見える。 ところが実際のそのプレイ感覚はウェルメイドな「デビルメイクライ」的なスラッシュアクションでも、過去のGHM作品の名前やガジェットを大量に搭載していながらこの作品でしかあり得ないワンアンドオンリーの実感が残るのである。 それには主要なスラッシュアクションのメカニクス・デザインのタイトな構築と、GHMのアートの両者が合致しているのが大きい。基本は剣劇の連続でコンボを稼ぐことで、射撃やヒーリングから一撃必殺のアドレナリンバーストなど特殊能力を使用するためのブラッドゲージを溜めて戦況を有利に持っていくことが主だ。 なので敵が取ってくるのは「いかにコンボを稼がせないか」という目的に絞られており、攻撃のコンボを受けている最中でも怯まず攻撃に転じてきたり、防御の体制を取ることでコンボを途切れさせようとする。 そうした敵の攻撃に合わせた行動が打撃の連打で敵のガードを開けたりジャストガードやドッジといった回避行動であり、これらに成功すれば敵の体制を崩しコンボを増やすことに転じられたり、このゲームのアクションのハイライトであるドッジバーストによって高速で切り刻むことでコンボを稼ぐことができる。 単なるコンボ稼ぎの攻撃作業だけでなく、敵の行動を見ながらこちらが防御・回避などの行動を成功させることの大きなレスポンスがあり、最終的には荒れ狂うように高速化して刀を振るい、止めの処刑ムーブへと移行する。そこで体力レベル・ブラッドレベル・スキルレベルを上げるいずれかのパラメーターを上昇させる処刑ムーブをすることが出来、徹底してプレイヤーのアクションの成功に合わせた見返りとしてさらなるアクションの快楽の提供や、RPG的な主人公の性能成長の大きな見返りというリターンがある。これらのサイクルを構築することで攻防や戦術習得による快感原則から外れないようにしている。 また本作はスラッシュアクションに海外のTPSが混ざった形でもあり、ステージのレベルデザインによってはそのまま簡単なカバーリングシューターのようにもなる。意外にこのあたりのミックスはスラッシュアクション界隈では未開拓であり、ゲームメカニクスとしてこの二つの相性は果たしていいのかはともかく、大崩れになってしまうようなゲームバランスの崩壊も無く「シャドウオブザダムド」の経験が有効に働いている形となっている。 このようにメインもサブも様々なミッションが多数あるがそれらのテクニック上達・実践を行えるミッションも多々あるため、技術上達の熱中度は高い。 音楽もかなり高田雅史期のGHMのような方向に合わされる形になっており、全体的な音の表現は良好。ドッジバーストやアドレナリンバースト発動時にマントラのようなコーラスが聞え、主人公モンドの左半身が狂気的に包まれるその瞬間に本作のアートとデザインが一致したそれを見られる。
若干プレイヤーの技術習得の成長曲線が荒く、序盤にしてコンボだけでなく射撃・回避・防御のタイミングをかなり習得した状態でないと苦しいボスと闘うことになる。 ミッションの結果としてランク付けが為されるんだけど、ここではプラチナゲームスのような小多数のコンボ数・ダメージ量・クリアタイムなどプレイヤーがすぐさま理解できるようなセクションだけでなく独自の評価軸として「打撃手当」とか「射撃手当」といった、意識的に打撃や射撃を要求するセクションがある。それはともかくとして中には「幽霊手当」「紳士手当」といったまったく一見してどういう評価軸なのか明確ではないセクションもミッションによってはあり、一体どうすればいいのか戸惑う。 また、プラチナ神谷作品「ベヨネッタ」をトップとして比較すると、斬撃・打撃の混合やディレイによるコンボツリーが無く、慣れてくると斬撃の連打が通常の状態になって如何に敵の攻撃行動を回避・対応するか?が意識の主軸になる。ただこのシンプルさが本作の良質さを保証しているのも否定できないためスラッシュアクションファンにはこのあたりで分かれるかもしれない。 GHMはこれまでゲームメカニクス・デザイン構築にぜんぜん興味が無いってのは長年見ているファンなら分かると思うけど、今回GOODでも上げたように基礎ゲームメカニクスやデザインは過去に無くタイトに出来あがっている。それだけに、明らかにこれは須田剛一自身が大きくディレクションしただろっていうアイディア一発賭けの表現全開のエピソードが浮く。 音楽は全体的に良質な一方、本作ならではのアンセムと言える曲が無い。「シャドウオブザダムド」でも「ロリポップチェーンソー」でもテーマがあったわけだし。あ、でもクラシック「新世界から」のアレンジがそれってことでいいのか・・・
ゲームメカニクスで言えば「スラッシュアクション&TPS」という意外に未開拓または開拓途中のジャンルであり、TPSの「狙う・カバーする・位置取りをする」という、スラッシュアクションと相反する溜めや待ちが要求されるデザインの目的の中で「狙う」の要素が大きくなっているため大崩れになるような相反もないし、大型の敵には鎧を撃つことで外していくことができるなどなどで戦略を崩して行けるなどこの方向性の可能性を探っているかに見える。 「メタルギアライジング」でスラッシュに自由切断、DmCでイギリス風味でリブートとスラッシュアクションは行き詰ってマニエリズム化してるか否か?の中でこの日本の得意とするジャンルと海外の得意とするジャンルのミックスが今後GHMで極まって行けば「スラッシュ&シューター」というジャンルを切り開けるかもしれない。 これまでもデヴィッド・リンチの映画のような現実と夢、記憶と認識、自己と他者といった境界が揺らぐ世界と物語を作ってきたのだが今回のこれはもっともリンチらしい物語であり、それは「ロスト・ハイウェイ」や「マルホランド・ドライブ」のような、意図的に重要な情報を語らず、主人公が過去にあった重大な記憶を押し殺し分裂するそれだ。以上のリンチ作品の謎解きとその実体を見るのに慣れているならば、バラバラのようだがその実シンプルな物語であることが分かると思う。
GOOD!
過去のグラスホッパーマニファクチュア(以下GHM)作品を思い出させる名前やキャラクターデザインや「キラー7」のようなグラフィックスに加え、「デビルメイクライ」から定義されただろう剣と射撃のスラッシュアクションと本来二重に目新しいものではないかに見える。
ところが実際のそのプレイ感覚はウェルメイドな「デビルメイクライ」的なスラッシュアクションでも、過去のGHM作品の名前やガジェットを大量に搭載していながらこの作品でしかあり得ないワンアンドオンリーの実感が残るのである。
それには主要なスラッシュアクションのメカニクス・デザインのタイトな構築と、GHMのアートの両者が合致しているのが大きい。基本は剣劇の連続でコンボを稼ぐことで、射撃やヒーリングから一撃必殺のアドレナリンバーストなど特殊能力を使用するためのブラッドゲージを溜めて戦況を有利に持っていくことが主だ。
なので敵が取ってくるのは「いかにコンボを稼がせないか」という目的に絞られており、攻撃のコンボを受けている最中でも怯まず攻撃に転じてきたり、防御の体制を取ることでコンボを途切れさせようとする。
そうした敵の攻撃に合わせた行動が打撃の連打で敵のガードを開けたりジャストガードやドッジといった回避行動であり、これらに成功すれば敵の体制を崩しコンボを増やすことに転じられたり、このゲームのアクションのハイライトであるドッジバーストによって高速で切り刻むことでコンボを稼ぐことができる。
単なるコンボ稼ぎの攻撃作業だけでなく、敵の行動を見ながらこちらが防御・回避などの行動を成功させることの大きなレスポンスがあり、最終的には荒れ狂うように高速化して刀を振るい、止めの処刑ムーブへと移行する。そこで体力レベル・ブラッドレベル・スキルレベルを上げるいずれかのパラメーターを上昇させる処刑ムーブをすることが出来、徹底してプレイヤーのアクションの成功に合わせた見返りとしてさらなるアクションの快楽の提供や、RPG的な主人公の性能成長の大きな見返りというリターンがある。これらのサイクルを構築することで攻防や戦術習得による快感原則から外れないようにしている。
また本作はスラッシュアクションに海外のTPSが混ざった形でもあり、ステージのレベルデザインによってはそのまま簡単なカバーリングシューターのようにもなる。意外にこのあたりのミックスはスラッシュアクション界隈では未開拓であり、ゲームメカニクスとしてこの二つの相性は果たしていいのかはともかく、大崩れになってしまうようなゲームバランスの崩壊も無く「シャドウオブザダムド」の経験が有効に働いている形となっている。
このようにメインもサブも様々なミッションが多数あるがそれらのテクニック上達・実践を行えるミッションも多々あるため、技術上達の熱中度は高い。
音楽もかなり高田雅史期のGHMのような方向に合わされる形になっており、全体的な音の表現は良好。ドッジバーストやアドレナリンバースト発動時にマントラのようなコーラスが聞え、主人公モンドの左半身が狂気的に包まれるその瞬間に本作のアートとデザインが一致したそれを見られる。
BAD/REQUEST
若干プレイヤーの技術習得の成長曲線が荒く、序盤にしてコンボだけでなく射撃・回避・防御のタイミングをかなり習得した状態でないと苦しいボスと闘うことになる。
ミッションの結果としてランク付けが為されるんだけど、ここではプラチナゲームスのような小多数のコンボ数・ダメージ量・クリアタイムなどプレイヤーがすぐさま理解できるようなセクションだけでなく独自の評価軸として「打撃手当」とか「射撃手当」といった、意識的に打撃や射撃を要求するセクションがある。それはともかくとして中には「幽霊手当」「紳士手当」といったまったく一見してどういう評価軸なのか明確ではないセクションもミッションによってはあり、一体どうすればいいのか戸惑う。
また、プラチナ神谷作品「ベヨネッタ」をトップとして比較すると、斬撃・打撃の混合やディレイによるコンボツリーが無く、慣れてくると斬撃の連打が通常の状態になって如何に敵の攻撃行動を回避・対応するか?が意識の主軸になる。ただこのシンプルさが本作の良質さを保証しているのも否定できないためスラッシュアクションファンにはこのあたりで分かれるかもしれない。
GHMはこれまでゲームメカニクス・デザイン構築にぜんぜん興味が無いってのは長年見ているファンなら分かると思うけど、今回GOODでも上げたように基礎ゲームメカニクスやデザインは過去に無くタイトに出来あがっている。それだけに、明らかにこれは須田剛一自身が大きくディレクションしただろっていうアイディア一発賭けの表現全開のエピソードが浮く。
音楽は全体的に良質な一方、本作ならではのアンセムと言える曲が無い。「シャドウオブザダムド」でも「ロリポップチェーンソー」でもテーマがあったわけだし。あ、でもクラシック「新世界から」のアレンジがそれってことでいいのか・・・
COMMENT
ゲームメカニクスで言えば「スラッシュアクション&TPS」という意外に未開拓または開拓途中のジャンルであり、TPSの「狙う・カバーする・位置取りをする」という、スラッシュアクションと相反する溜めや待ちが要求されるデザインの目的の中で「狙う」の要素が大きくなっているため大崩れになるような相反もないし、大型の敵には鎧を撃つことで外していくことができるなどなどで戦略を崩して行けるなどこの方向性の可能性を探っているかに見える。
「メタルギアライジング」でスラッシュに自由切断、DmCでイギリス風味でリブートとスラッシュアクションは行き詰ってマニエリズム化してるか否か?の中でこの日本の得意とするジャンルと海外の得意とするジャンルのミックスが今後GHMで極まって行けば「スラッシュ&シューター」というジャンルを切り開けるかもしれない。
これまでもデヴィッド・リンチの映画のような現実と夢、記憶と認識、自己と他者といった境界が揺らぐ世界と物語を作ってきたのだが今回のこれはもっともリンチらしい物語であり、それは「ロスト・ハイウェイ」や「マルホランド・ドライブ」のような、意図的に重要な情報を語らず、主人公が過去にあった重大な記憶を押し殺し分裂するそれだ。以上のリンチ作品の謎解きとその実体を見るのに慣れているならば、バラバラのようだがその実シンプルな物語であることが分かると思う。